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JF岡山漁連
第2事業部次長
上柏 恒一

さん

扱いが難しい“鮮魚”を全国に

との想いが実現した

その日、
朝7時半から始まる日生の競り市を見るために、まだ暗い中車を走らせていた。
岡山市内からだと約1時間ほどの漁師町。
「地元の新鮮な魚をドッグフードの食材として使いたい!」
そう考えたのがそもそもの始まりだった。
もう5年以上前だと思うんです。岡山県漁連さんに「瀬戸内名産のゲタ(舌平目)を犬ごはんの主原料として活用させてください」と話に行ったのは。
正直、ドッグフードにされると聞いた時、ビックリしたんですよ。ペットブームで、犬も人間と同じような品質を求められていると聞いてはいましたが、その相談がうちに来るとは。上司も「えっ?ドッグフード?」って驚いていました(笑)
「ドットわん」として魚のドッグフードを作るのなら、魚粉でなくて鮮魚にこだわりたいと思ったんです。鮮度も味も間違いないし、全国的にも鮮魚からドッグフードを作っているメーカーはほぼ無いので挑戦したくて。そんな中、地元日生の漁港で調達した鮮魚だけを使い、すごく手間をかけた食材が仕入れられる!興奮しましたね。
料理と同じで、きちんとした食材は下処理で差が出ます。熟練の手仕事で1尾ずつ頭と内臓をとって丁寧に皮を剥ぐ。いい魚を出荷するには手間を惜しまないことが大切なんです。
確か最初は漁のバラつきがあるから、通年岡山水揚げだけで揃うかどうか不安っていうお話でしたけど、「瀬戸内産と範囲が広げられるなら魚種指定でも安定供給しましょう!」って決断いただきました(笑)。
そうでしたね。それくらい魚種指定は難しいんですよ。その日なにがどのくらい獲れるか分からない鮮魚はなかなか売り切るのが難しく、全てに価値付けするのはそれだけでも大変なんです。そのあたり大量生産の食品メーカーでは扱いづらい魚が活用できるのは助かりますね。何より定期的に買っていただけると漁師の収入安定につながるのが嬉しいことです。
岡山県漁連さんと一緒に魚を使い切ることに取組みはじめてから、ほかの企業や消費者の方からもより共感されるようになってきたんです。 
どこの産地で、どういった材料を使っているのか結構気にする人は多いですからね。
そうなんです。そこは一般の消費者さんと一緒で、最近は犬の飼い主さんも産地までちゃんと確認して買いますから。
最初、ゲタ(舌平目)は小骨が多いのが難点で、細かいメッシュを使ってもなかなか骨まで細かくすることができなくて。魚のサイズを変えたり、二度器械に通したりもしました。
試行錯誤の末、最終的にサラサラのパウダー状までしてくれる食品加工会社を見つけて、やっと商品化にたどり着けたわけです。
初めてのことだったけど、安定的に買って貰えるのは漁師にもメリットがある。最近は魚食離れも進んでいますし、食品のジャンルに関係なく付加価値をつけながらどうやって売っていこうか考えていたところでした。来られたタイミングも良かったです。他業種の話を聞いていると、私たちも勉強になるし、そういった未利用の魚を探しによその浜を回ってみると、まだまだ価値づけできるものがあるのではないかと予想しています。
せっかく捕った魚に価値がつかないのは心が痛みますよね。いろいろ提案させていただいて、価値づけできるよう一緒に考えていけたらいいなと思っています。
そうですね。お互いに協力し合わないと実現できないことですから。私たちがどんなに一生懸命考えても、ドッグフードの発想はまずないですし。生産者にもその話を聞いてもらって、納得してもらえればどんどん形になっていくと思うんです。逆にこちらから「この魚を何とかして欲しい」という相談を持ちかけますね。早速ですがハモの漁獲が急に増えてうまく流通してないんです…といった具合にいろいろご相談に乗っていただければ嬉しいです。
犬のご飯にということだったら、全面的に引き受けますので(笑)。

岡山のソウルフード「ゲタ」を

知ってもらうチャンス!

発売したての頃、PR用に作ったパンフレットがあるんです。デザイナーが最初に作ってきたのが“舌平目”じゃなくて“ヒラメ”で、似ているけど違う違うって(笑)。舌平目の姿を正確に知ってほしくて目をもっと寄せてとか、包丁でちゃんとさばくところを撮ってもらって、「ものすごく手間がかかっているんです!」という部分をお伝えできたらと思って。
実際にやってますんで(笑)。
でも悲しいかな「コレってイメージでしょ?」とか言われちゃう。違うんです!本当にやってるんですって(笑)。
魚よく見てますが、ほんとリアルですね。
この舌平目(ゲタ)のパンフをカタログとかに挟むんですけど、ちょこっとのぞいたりするだけで可愛いんですよ。それにドットわん魚ごはんのパッケージは瀬戸内海をモチーフにしています。ドッグフードで島々を作って、「これは島の風景なんですよ!」って。
デザインが愛らしくて、意味があるっていうのもいいですね。
でも、なかなか気づいてもらえないんですよ。「なんでこんなデザインなんですか?」ってお客様がいるだけで嬉しいんですけど。
それにしても15年間も全国各地めぐってたら、いろんな会社や生産者との出会いがあるんでしょうね。
もう、食材関係者に会うためにあらゆる場所に伺いました。中には地元しか出回らない珍しい部位や、人用ではプレミアムがついて仕入困難な希少食材とか。新しいお客様をファンにできるドッグフードだったから、逆に話を聞いてくれたと思います。
ウチとしても本当に将来性のある取引だと思っています。魚関係なら、「もう岡山県漁連に任せてください!」って言いたいくらい(笑)。
こちらこそ、これからも愛犬と飼い主さんに向け、瀬戸内海の魚をどんどん紹介していきたいと思っています。上柏さん、岡山県漁業協同組合連合会さん、本当にありがとうございました。
ありがとう|thanks!15
海流や乱獲・海の生態系の急速な変化によって、
漁業関係者は悲鳴を上げています。魚が獲れないこともありますが、
水揚げする漁港が変わることで本来高値で競り落とされるはずの魚が
“売れ残る”という事態も。
人も犬も食べることは衣食住の中でも最優先すべきこと。
限りある食料資源を未利用にしないためにも
「ドットわん」は産地に足を運び、直接買い付けるスタイルを
続けていきたいと思っています。
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