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木次乳業有限会社
代表取締役
佐藤 貞之

さん

“赤ちゃんには母乳を”に

正直である強さを学んだ

はじめて木次乳業を訪ねたのは2013年。創業からちょうど10年目の年だった。
オーガニック業界では全国的に名の知れた木次乳業と
取引できるかもしれない。
そんな期待と、実は不安も抱えながらの訪問だった。
なぜなら木次乳業の佐藤社長は、
その人を見て取引するか判断すると聞いていたからだ。
奥出雲の山間道を抜け、面接を受ける新人のような気持で会社に到着。
応接室に通され、席に着くと社長は開口一番こう言った。

「ピュアボックスさんはいい仕事をされてますね!」

その一言で、この取引が前向きに進むことがわかり、場の緊張した空気が一気に和んだことを憶えている。正直ほっと胸をなでおろした。
それ以上に佐藤社長が、自分達の仕事を認めてくれたことがうれしかった。
あの時、社長に「いい仕事をされてますね!」って言われて本当に嬉しかったんです。
うちも人間に健康的な牛乳を作りたくて低温殺菌をいち早く始めましたが、当時ペットについての意識は低かったかな。でも、最近は犬や猫も愛する家族の一員でしょ。長生きして欲しいから、食事をすごく大切にする飼い主が増えてきた。だからペット業界で、無添加・安全にこだわってる会社と知って「素晴らしい取り組みだ」と思ったんですよ。
前回、日登牧場を拝見したとき、山に放牧された牛たちが草をモリモリ食べて、牛舎に帰ってからも干し草を食べているのを見て、とても健康な飼育環境だなぁと。おいしい生乳って、のびのび育った牛から生まれるんですね。自然の味をすごく大切にしておられる。
なぜ放牧しているかというと、人間も狭いところにいるとストレスがたまるでしょ。牛も一緒。もともと野生の動物だから、自然の山地でストレスのない飼育をしてやると健康的に育って、質のいい乳が良く出るんです。
山地で過ごすブラウンスイスの話を頂いたとき、犬に好相性なイメージがいくつも湧いて。自然の草を食べている牛は味が濃いですよね。だからスープにいいエキスが出てくるなとピンときたんです。
うちのは自然の草を食べているから香りが強くて味が濃い赤身。ただ肉質が固くて、人間が食べるには下処理にコストをかける必要があるんです。大切に育てた牛は最後まで使い切りたいけどコストを賄うほど値はつかない。どうしようかと思っていた矢先、食品の商談会で犬用のご飯にどうかと提案があったと報告を受けた。
担当の和田さんにはいろいろと提案を聞いていただいて。それがきっかけでやっと佐藤社長に会えました(笑)。
飼い主さんによく聞かれるのは、人向けとペット向けの違い。人向けはおいしさを追求しますが、ペットは味より安全が重要です。それで食材の質が大事で調味料などは使わず、食材本来のうま味がそのまま残る商品を作るんです。だから、ブラウンスイスに相性がいい加工はシンプルな水煮。肉の風味を損なわないよう、かける圧力や温度も調整します。いつものごはんにスープごとかけると、犬が皿をピカピカになるまで舐めてくれるんです。
うちも生乳に味は付けません(笑)。高温で殺菌するとたんぱく質が焦げるから濃いと感じるわけ。絞った乳をできるだけそのまま、安全に届けるために低温殺菌するのがいいんです。わかりやすくいうと生の乳は魚でいう“刺身”、低温殺菌したのが“タタキ”。高温殺菌したのは“焼き魚”と思ってください。もちろん人間もお母さんのお乳が、赤ちゃんにとってベスト。だから“赤ちゃんには母乳を”と言うんです。
それです!僕は木次乳業さんのキャッチフレーズが大好きなんです。この“赤ちゃんには母乳を”っていう言葉を初めて見た時、目が覚めたっていうか。それを知ったのは、ずいぶん前ですが、「いつかこういう会社と一緒に物作りしたい」という願いをずっと持っていたんです。

理想的な食事は

愛犬から学ぶのがいい

商品開発にはどれくらいの期間がかかるんですか?
生産者と最短でお仕事が成立するよう開発期間は短いんです。食材をお預かりしたらどんな加工技術と相性がいいかを検討して、全国にある提携食品会社に試作依頼。犬が食べる時に安全であることがパスできれば、即商品化します。
それはまた大変ですね。
犬なら人間が理想と思う食事が実現できるんです。人間みたいに“嫌だから食べない”ってことが少ない(笑)。実は僕たちが考える理想の食事には3軸があって、1つは食材を30品目食べるってこと。2つ目は腸を整える納豆。食べたものを自分で消化吸収できる準備は普段から大切ですから。3つ目の柱に旬の食材というのがあって、それを実現するため毎月3アイテムを作り続けることと、すぐに商品化できないとダメなわけです。
あと毎日続けるっていうことが大切ですよね。お散歩したり運動もそうですけど、食事もきちんとしたものを食べ続けるのがいいんでしょうね。
人向けに健康食のアドバイスしても、「もう放っておいてくれ~」って聞いてくれない感じじゃないですか(笑)。でも、犬の食事セミナーをすると、結構家族連れできてくださったり、意外に反響があるんですよ。
それはおもしろいですね。いい取り組みだと思います。
おうちで愛犬の理想的な食事について家族会議するじゃないですか。そうなると自分たちの食事の話にも、知らず知らずに繋がっていくらしいんですね。私たちももっと栄養バランスのいい食事をしようと。
間接的に子どもたちにも食育の話をすることができるわけですね。
僕らがどんどん食事の勉強をして、犬向けの話をしながら実は飼い主さんの話にもなっている。今まで偏っていた食事がそれじゃあダメだね、とか。季節によって味も違うね、なんていう話にもなるわけです。犬を通じて食育も可能になるわけで、そういう意味でも犬が真ん中にいるってことでしょうか。
すごいなぁ、いい話だなぁ。こういう思いで商品に取り組んでおられるのが本当に素晴らしい。
犬は本当に素直な生き物で、人間にとっては家族と同じくらい大事な存在なんですね。
僕たちの活動は、大切な家族である愛犬に、安全安心なご飯を届け続けること。そのために全国の生産者さんからいい食材を分けてもらう日々の仕事はサボれないんです(笑)。とにかく生産者さんにお会いして犬の話をし、お互いにいい関係になれるようにがんばっていきたいですね。
佐藤社長、今日はお忙しい中、本当にありがとうございました。これからもよろしくお願いします。
ありがとう|thanks!15
『40年前に低温殺菌牛乳をはじめて作り、
全国の同業社に製法を教えて歩いた』
このエピソードを知った時、社会貢献を貫く姿勢に勇気づけられました。
《犬の食事品質を向上する》ドッグ自然食をはじめてまだ15年ですが、
品質を守ることは並大抵の覚悟では叶いません。
それでも木次乳業さんほか全国取引先との連携を大切に、
「ドットわん」は変わらず“愛犬に健康な食事”を届けていきます。
今日もあしたも次の15年先も…パッケージのおめめに誓って。
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